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1.2 視程観測センサー

霧は地面付近に生じた雲で、空中に浮んだ無数の微小な水滴(霧粒)からなっている。微小な水滴は光を散乱し、吸収するので、霧の中では見通しが悪くなり、時には数m先が見えなくなる。薄い霧では500m〜1km先が見えるが、気象観測では見通せる距離(視程)が1km以上の場合はもや(靄)と呼んで霧と区別している。

霧粒は直径数μm〜数10μmの大きさで、1cm3の空気中に数10〜数100個含まれる。また、単位体積中に霧粒として存在している水の量を霧水量(きりみずりょう)といい、海霧で1m3当り0.1g〜2g、放射霧で0.01g〜1g程度である。霧水量が多い時ほど一般に視程は低下する。また、霧水量が同じでも、霧粒が小さくて数が多い時の方が視程は悪い。

降雨、降雪、霧等の降水粒子は視程を阻害する。雨と湿った雪は5センチ波を用いた周知の気象レーダーで検出できるが、乾いた雪や霧は検出できない。海上の霧を観測し、霧の濃さの二次元的な分布をリアルタイムで把握する観測システムとして、衛星によるリモートセンシング(光学的センサー、マイクロ波センサー)、地上に置いた光学観測によるの透過式センサーと散乱式センサー、ミリ波レーダー等が考えられる。

気象庁などの気象衛星データから雲または霧の在処を求め、このデータから視程を推定するような試みはまだ無いようである。衛星モートセンシングと地上の光学観測機器による方式は第3章の本文で概略を記述した。ここでは地上レーダーによる案を詳細に説明する。

 

気象研究所の報告(3)によると、局地的な霧の実況把握等には、分解能と探知距離の関係からミリ波レーダーが有効であるとされる。霧のレーダー反射因子は弱い雨(1mm/h程度)のそれより四桁程小さい。雲粒の粒子直径分布は、ほぼ1μmから400μmの範囲にあり、その最頻値は40μm程度である、霧粒はこれより小さく、海岸地方の粒子直径は、最頻値で20μmないし30μmである。霧水量は霧の成因(放射、移流、前線等)により異なる。

 

霧は電波に減衰を与えるので、霧の観測にはまず減衰の程度を調べる必要がある。霧粒による電波の減衰量(dB/km)は霧水量W(g/m3)と気温の関数で気温が低いほど、電波の波長が短いほど減衰量は大きい。さらに、霧粒が大きくなるほど霧粒は雨粒に近ずき、電波の減衰量は大きくなる。

CCIR Rep.721によると概略の減衰量は、霧水量Wについて波長8.6mmで次のようになる。

気温−8℃:減衰量(dB/km)=1.4W

気温20℃:減衰量(dB/km)=O.7W

気温20℃では、視程約300mの中程度の霧(霧水量は約0.05g/m3)の場合、減衰量は往復で約0.07dB/km、視程約50mの濃い霧(霧水量は約O.5g/m3)で、減衰量は約0.7dB/kmである。

 

 

 

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